離婚

離婚原因・離婚慰謝料・不貞慰謝料について

1 離婚原因

当事者間で離婚を合意できない場合は離婚訴訟で解決することになります。その場合、法律が定めた離婚原因がある場合に限り、離婚が認められることになります。離婚原因には次の5つがあります。

不貞行為
悪意の遺棄
3年以上の生死不明
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと
その他婚姻を継続し難い重大な事由があること

 離婚を請求する側は、まずこの離婚原因が認められるかの検討をします。

○ 不貞行為

 不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と性交渉を行うことです(性交渉に至らない性的関係は、後記の婚姻を継続し難い重大な事由にあたる可能性があります)。
 不貞を一旦許した場合に、後日、その不貞行為を離婚原因として主張できるかという問題があります。そもそも本当に許したのか、それとも謝罪を受けただけなのか、という問題がありますが、そのどちらであっても、他の事情も総合的に考慮して婚姻関係の破綻の有無を判断することになり、婚姻関係が破綻していて回復の見込みがない場合は、後記の婚姻を継続し難い重大な事由があるということになり、離婚が認められることになります。

○ 悪意の遺棄

 悪意の遺棄とは、正当な理由なく同居・協力・扶助義務を履行しないことです。相手方を置き去りにして家を出る、相手方を追い出す、相手方が出ざるを得ない状況に追い込んで帰宅を拒むなどが悪意の遺棄にあたる可能性があります。
 正当な理由のある別居は悪意の遺棄ではないので、夫のDVや虐待などのため妻が子を連れて別居することは、悪意の遺棄にあたらないということになります。

○ その他婚姻を継続し難い重大な事由があること

 婚姻関係が破綻しており、かつ、回復の見込みがないことをいいます。
 ・暴行・暴言、虐待、性暴力
 ・怠惰な性格、勤労意欲の欠如、浪費・多額の借金
 ・親族との不和(夫が間に入って積極的に修復する努力をしないなど)
 ・性交渉不能、正当な理由のない性交渉拒否
 ・宗教活動
 ・性格・価値観・人生観や生活感覚の不一致、愛情の喪失
 などの点が問題になることが多く、別居・家庭内別居の有無・期間、会話の有無、性交渉の有無、口論・喧嘩の有無・ 程度、修復の意思・行動の有無、未成熟子の有無、子らとの関係、離婚についての子の意思、訴訟態度等との総合判断になります。長期の別居がある場合は、破綻が認められやすいといえます。

2 離婚慰謝料

○ 離婚慰謝料が発生する場合
 離婚原因が主に夫婦の一方にあるという離婚では、その一方には他方に対し離婚慰謝料を支払う義務が生じます。
 離婚理由が、性格の不一致や価値観の相違など、夫婦のどちらかが一方的に悪いとはいえないような場合には、離婚慰謝料の請求はできないことになります。

○ 手続
 離婚成立前は、離婚調停の申し立てに付随して慰謝料請求をすることができます。
 離婚調停が不成立となった場合は、離婚は訴訟で解決することになりますが、離婚訴訟に離婚慰謝料の請求を併合することができます。
 離婚成立後に、離婚慰謝料を請求することもできます。
 離婚成立後に、離婚慰謝料だけ請求する場合は、 まずは調停(家裁又は簡裁に申立)をし、調停不成立となった場合は訴訟で解決することになります。
 離婚成立後に、離婚慰謝料だけでなく財産分与も請求する場合は、まずは調停(家裁へ申立)をし、調停不成立となった場合は、財産分与については審判で解決することになり、離婚慰謝料については財産分与に慰謝料を含めて判断してもらうか、別途訴訟で解決することになります。

○ 慰謝料の金額
 破綻原因、有責行為の違法性の程度、婚姻期間、 相手方の資力などを考慮して決定されます。傾向として、200~300万円となることが多いです。

3 不貞行為の相手方に対する慰謝料請求

 不貞行為の相手方に対しては、不貞慰謝料を請求することができます。
 不貞行為の前に既に婚姻関係が破綻していたときは、特段の事情のない限り、不貞慰謝料を請求することはできません。
 別居や離婚に至らなくても請求することができ、ただし、金額は別居や離婚に至った場合に比べると低額となる傾向にあります。
 不貞行為は、配偶者の一方と相手方との共同不法行為ですので、配偶者の一方と相手方の二人に慰謝料請求することも、一人だけ(配偶者又は相手方)に請求することもできます。

○ 不貞慰謝料の金額
  次のような事情を考慮して決定されます。
  ・不貞関係が発生した時期、継続期間
  ・不貞関係の発生・継続についての主導性
  ・相手方の年齢、資力
  ・不貞関係が既に解消されているかどうか
  ・夫婦関係が不貞行為により破綻に至ったかどうか
  ・請求者が不貞行為を行った配偶者の責任について免除しているかどうか
  ・請求者が未成熟子を監護しているかどうか
  ・不貞行為以前に、請求者側に夫婦間の不和について何らかの問題があったかどうか  など

 不貞慰謝料の金額は、不貞行為を行った配偶者の慰謝料額よりは低額となる傾向にあり、裁判例では数10万~300万円の幅があります。



※ 以下もご参照ください。
  離婚の方法と種類、離婚後の手続きなどについて
  親権・面会交流・子の引き渡しについて
  婚姻費用の分担・養育費について